骨のおはなし
骨は骨芽(こつが)細胞によって作られ、血液中のカルシウムを取り込み骨を作っていきます。一方、作られた骨は破骨(はこつ)細胞によって古い骨が溶かされ、骨の中のカルシウムを血液中に放出します。このように骨は常に作り変えられています。また骨の中の無機質(主にカルシウムとリン)の量を
骨量(骨塩量)といい単位体積内の骨量を
骨密度といいます。
骨粗鬆症とは?
骨粗鬆症とは『骨量減少と骨の微細構造の劣化の結果、骨の脆弱化を引き起こし、骨折が起こりやすくなる全身性の骨疾患』と定義されています。
骨芽細胞が骨を作るスピードより、破骨細胞が骨を壊すスピードが早くなり、結果として、骨密度が減少し骨がもろく、骨折しやすくなる病態をいいます。
骨粗鬆症は、閉経や加齢などが原因でおこる
原発性骨粗鬆症と、特定の疾患や薬剤によっておこる続
発性骨粗鬆症に分けられます。このうち、原発性骨粗鬆症が、骨粗鬆症の90%以上を占め、その多くは中高年者に起こる退行期骨粗鬆症です。残りの10%は、クッシング症候群、バセドウ病、重症糖尿病、慢性関節リウマチ、慢性腎不全、アルコール多飲、ステロイド剤長期服用などによる続発性骨粗鬆症です(表1)。
※表をクリックすると拡大します。
骨粗鬆症は女性の病気と思われがちですが、
高齢者においては、男性も骨粗鬆症になりますので注意が必要です(図1)。一方、
食生活の乱れや、
運動不足、過剰なダイエットも将来的に骨粗鬆症となる可能性が示唆されており、若年者の予備軍が最近注目されています。
症状について
臨床症状の特徴は、
腰痛・背部痛です。これは椎骨の
圧迫骨折によるものです。このほか、
背中や腰が丸くなる円背(えんばい)になるほか、その部位に痛みを生じます。原発性骨粗鬆症は骨の代謝の状態により2つに分類され、骨折の好発部位も異なります。
1)
高代謝回転型骨粗鬆症
好発年齢は51〜75歳で、男女比は1:6で、骨形成は十分ですが、骨吸収がそれ以上に亢進します。
主な原因は閉経や卵巣摘出などでおこる
女性ホルモン(エストロゲン)の分泌機能低下によるものです。
椎骨圧迫骨折と
橈骨遠位部骨折が多いと言われて
います。
2)
低代謝回転型骨粗鬆症
好発年齢は70歳で、男女比は1:2です。主な原因は
加齢で、骨形成の低下が主病で骨が委縮する
病態です。
大腿骨頸部骨折・
上腕骨近位部骨折・
脛骨近位部骨折・
骨盤骨折などが多いといわれて
います。
症状について 検査は、
骨代謝マーカー検査と
画像検査の2つがあります。骨代謝状態を調べる
骨代謝マーカーには骨吸収マーカーと骨形成マーカーがあります。共に検体検査(血液・尿)であり、将来の骨量減少、骨折リスク、

さらに治療効果の評価、判定に有用です。
画像検査には、DXA(デキサ)法・MD法・QCT法・QUS法(超音波法)の4種があります。
当院では、踵骨(かかとの骨)の状態を評価する(QUS法)超音波骨密度測定装置による測定を行っ
ております(図2)。
治療と予防について
骨粗鬆症では、骨折を予防し、QOL(生活の質)や ADL(日常生活動作)を維持・向上させることが治療目標です。
骨折の原因として『
転倒』が大きな割合を占め、特に高齢者では、大腿骨骨折のほとんど(90%以上)が転倒によるものであり、そのまま寝たきりへと移行してしまうことも多く、転倒予防はADLを維持する上で重要です。
運動は、骨粗鬆症の予防だけでなく、足腰の筋力増強にも効果的で転倒の予防にもつながります。 骨粗鬆症の治療には、
運動療法・食事療法・薬物療法があり、骨量の減少の程度や症状に合わせて行います。
1)運動療法
運動は、骨の代謝が高まり、骨量を増やす効果があります。推奨されている運動として、ウォーキング・ジョギング・水泳などの全身運動です。しかし、過度な運動は必要ありません。歩いて買い物に行ったり、エレベーターを使わずに階段を上ったり、適度に太陽光を浴びながら散歩するなど日常生活に運動を取り入れて下さい。
2)食事療法
十分な骨密度を保つために、
カルシウムを摂取すると同時に、骨代謝を活発にする
ビタミンD、骨の形成を促す
ビタミンK、骨を強くする
タンパク質を摂取するなど、栄養バランスのいい食事をすることが大切です。
★注意が必要な栄養素と物質★
【リン】
インスタント食品(レトルト食品・カップラーメン・冷凍食品・缶詰など)、清涼飲料、スナック菓子、ファーストフードなどに多く含まれており、過剰摂取すると尿中へのカルシウム排泄を促進し、腸管からのカルシウム吸収を妨げます。
【アルコール】
過度の飲酒はビタミンDの代謝障害が起き、腸管からのカルシウム吸収を妨げます。
【カフェイン】
カフェインは尿中へのカルシウム排泄を促進させる作用があります。多量のコーヒーを飲むと体内のカルシウムバランスが崩れます。
【ニコチン】
タバコに含まれるニコチンや煙中のカドミウムが骨芽細胞の機能を低下させ、腸管からのカルシウム吸収を妨げます。骨を守る働きのあるエストロゲンの分泌も低下させるため骨が弱くなります。
3)薬物療法
高代謝回転型骨粗鬆症に対しては骨吸収抑制剤、低代謝回転型骨粗鬆症に対しては骨形成促進剤が適応になり、患者さんの状態に合わせて以下の薬剤を組み合わせ選択します。
◆カルシウム製剤◆
低下している血液中のカルシウム量を回復させることにより、副甲状腺ホルモンの分泌を抑えます。
◆活性型ビタミンD3(骨代謝調節薬)◆
小腸におけるカルシウムの吸収促進と、腎臓におけるカルシウムの再吸収を促進することにより血清カルシウム値を維持する作用があります。
◆ビタミンK2(骨形成促進薬)◆
骨芽細胞に直接作用して、骨量を増加させるとともに骨吸収抑制作用もあります。
◆エストロゲン製剤(骨吸収抑制薬)◆
骨吸収を抑制し、甲状腺でのカルシトニン(血液中のカルシウムを骨に運ぶホルモン)の分泌と、腸でのカルシウムの吸収を促進し、腎臓ではビタミンDの活性化を促進します。
◆カルシトニン製剤(骨吸収抑制薬)◆
破骨細胞を減少させて骨吸収を抑制します。また、骨芽細胞の骨形成を促進させます。
◆イプリフラボン(骨吸収抑制薬)◆
直接的に骨芽細胞の骨形成を促進させ、骨吸収を抑制します。
◆ビスホスホネート(骨吸収抑制薬)◆
破骨細胞の増殖を抑え、さらにその働きを抑えます。